義母の本籍探しの旅

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この路のように
長く不案内な行く手に
希望はあるのか

話せば長い話
昔のブログをみてください

「自立の詩」を書いてから、もう2年半
義母のことを思い煩う日々のまっただ中で
不思議な家庭の不思議な人々のことを再び思う

「もううちに帰っておいでよ」
目が見えなくなった老母は
初老の息子の手を握りしめ
哀願するように幼名をつぶやく

「もう子どもたちは家を出たのだろう」
「だったら、もううちに帰ってきて
あたしの面倒をみておくれ」
ここには息子が40年間社会で生きてきて
家庭を作り上げてきたという認識はない

「Sさんなら強いから大丈夫」
息子の結婚相手は所詮他人だ
「あの人はひとりで生きていけるよ」
なるほどね

いくつになっても親子だと人はいう
いくつになっても姉弟の上下関係はあるという
しかし人前でも
「○○○○!」と呼びつけにし
一方的に「□月△日○時に必ず来て」
と命令されれば
ちょっと抵抗を感じるのは
この初老の長男だけではあるまい

何をしてもありがとうひとつ言われるわけでもなく
不足に対してはことごとく文句の嵐

「姉さんひとりじゃ母さんの介護は大変だろう」と
地域包括支援センターに何度も足を運び
担当の医師を決め、介護認定3級にやっとこぎ着けた
が、姉からは「勝手なことをしないでもらいたい」
「あの医者嫌いなのよ」
「嫌いなものは嫌い」
「だから○○○○の回し者のような人たちがくるのは
困るのよ」

かくしてあの「自立の詩」が書かれたあたりで
長男は姉と決別した
もともと自分の生まれ育った家庭の雰囲気が
すきではなかった
「勉強はしろ、いい成績をとれ」とは言うけれど
「何のために勉強するのか」
「どう生きるべきなのか」は問わない母親

いつしか部活動にのめり込み
大会や合宿のため家を空ける日々
家では人と比較したり、
人をあしざまに言うことが好きな姉と母は意気投合

父親は一部上場会社の役員
家庭教育は妻に任せっきりの典型的な山の手の男
優秀な弟に家族は腫れ物を扱うような神経を使い
元気な長男に家の仕事をさせようとしてもいないので
「うちの子は高校時代からぐれた」と後年聞かされた


長男にはこの家族が世間への見栄だけで
生きているように思えた

ろくに予備校に通わず、山に通い詰めたあげく
東大を落ちたとき、長男は腹を決めた
自分で働いて金を儲けて私大へ行こう

それが自立の一歩だったはずだ
Sを連れて家に行ったとき、はじめて会ったSに姉は
「恋するなんてふけつ。気が狂っているんじゃない」
と矢のような言葉を投げつけて消えた

Sの長い髪を見た母は
「あなた、わたしの後輩ってきいていたけれど
そんな髪でお勉強できるの。
うちの学校も落ちぶれたものね」と鼻で笑った

かくなる上は行動しかないと
ふたりは家を出て大学の近くにアパートを借りた

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それからいろんなことがあった
孫の姿をみれば母親の心も和むかもしれないと
長男は初孫誕生の日に、母親を迎えに行った
5分間だけ病室に見舞った母は
「犬腹だね」と言った

それから年に1度は
小一時間程度の訪問をする間柄になった
しかし実家にいけば
いつまで経っても長男は昔のままの人間関係
家族のあざけりの対象

という家族はこの40年間だれひとり働いていない
優秀だったはずの弟は東大に入学したものの
家に引きこもって勉強するだけの異常な生活
姉も大学卒業後は務めにも出ず昼夜逆転の生活

家族は安全な家の中で
世間を笑い、
家族を捨てて出て行った長男を呪っていた
○○○○がしっかりしていてくれたら
こんなことにならなかったのに・・・

父親が20年前に死んだのだが
以来、父親の遺族年金だけで
家族3人はひっそり暮らしていた
つまり父親の死後、○○○○がちゃんと家にいて
働いたお金を家に入れてくれたら
自分たちはこんなに困らないのにというわけだ

まったくどこまでも自己中な家族だ
父親はそんな家族がいやで
死の10年ほど前から、栃木に家を建てて
月の半分以上はそちらでひとり暮らしをしていた
そこで長男の家族は栃木の壬生の家
泊まりがけで遊びに行くようになった

その家庭に変化が起き始めたのは
4年ほど前から母親の目が
急速に悪くなったときからだ

その後の役所の調べで
母には「網膜色素変性症」があり、
4年前まで
「難病の認定」を受けていたことがわかった
4年前にそれが切れたのは母の目が悪くなり
そうした事務手続きはおろか
家事の一切ができなくなった
せいということがわかった

その頃一度だけ姉のいないところで母は
「どこか施設に入れておくれ。
ここではだれも来てくれなくてお水1杯飲めないから」と

しかしここまでひどい生活だったとは
長男は想像もしていなかった

「お医者は1日に2リットルの水が
必要だからというから
あたしはこれ一杯飲むようにしているんだ」といい
歯も20本全部そろっていた母
今は2本しかのこっていない
それも腐っている



それが・・・1年以上音信不通だった姉から
6月1日突然の電話
緊張が走る
「○○○○いる?」
わたしはいつも電話交換手
「病院に行ってますが・・・」
「お母さんが転んでいたいいたいっていうの」
「そりゃ骨折かもしれないから、
すぐに救急車呼んだ方がいいわ」
「○○○○に病院に連れて行ってもらいたいのよ」

それでも姉にしては上出来救急車を呼べたらしい
それからの2ヶ月間は悪夢のように過ぎていった
その慌ただしさの中でわたしは母を亡くし
悲しむ間もなく、走り続けた

老人虐待に近い状態に放置されていた母
汚物にまみれた姿に
運び込まれた病院でもびっくりしたようだ
わたしたちの登場で医者も合点がいったようで
以来窓口がすべて長男となって
わたしは転院先探しから手術までの医者との話し合い
介護認定見直し、退院後の受け入れ先探しと走り回った

その結果、老健に入所したものの
食事を口にせず、現在の病院へ

姉は「みんな○○○○が悪いのよ」と
また攻撃が始まった
「あんたはなんにもしなかったくせに。
わたしにはなんの落ち度もないから。
前のリハビリ病院にもどしてちょうだい」
と繰り返す

「お母さんにはどんな処置をしてもいいから
一日でも長く生きていてもらいたい」と医者に
そりゃお母さんがいなくなったら
遺族年金がなくなるから困るだろう
しかし、そのお金だって本来は
お母さんのために使うべきお金だ


かくして医者は長男に
「成年後見人になって決定権を持たなければ」と

ここから姉の一切の協力が得られないなかでの
母親の本籍探しが始まった

住所のある区役所に行ったけれど、
同居人の同意がなければ
本籍もわからず謄本はおろか、
住民票もとることができない

わたしたちの住所のある区役所で
長男の謄本と住民票をとる
ここではわたしたちの以前の入籍の状況はでてこない
そこでわたしたちの昔の本籍のある
千葉県に行くことになった

なんだか推理小説のよう
どんどん調べ物にはいっていくようでわくわく
とでもしなければ
この猛暑の中、あちこちへ行くことは容易ではない

千葉県でやっと長男の両親の本籍地が明らかになる
な・なんと野田市だった
「そう言えば昔、
父は本籍は変えるものではないと言っていた」と
やれやれ今度は16号線を北上しなければ
その前に昔住んでいた家を見てこよう


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 高台にある家は昔のままだった
 ただ雨戸の色が塗り替えられていた
 庭木も生け垣も伸び放題
 駐車場の上に盛り土をした
 築山の植物たちも元気そう

 ただ南と西にあった
 赤松の林は見事になくなっていた
 
 ご近所も5軒だけだったが増えていて
 しかも昔いた人は一軒だけになっていた




車を降りると
すごい湿度に眼鏡が曇った
そして犬の激しい鳴き声に押されて
そうそうに懐かしい昔の家をあとに


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ここ米本はわたしが
里山歩きが大好きになった原点だ
すっかり様変わりしたなかに
いつもの散歩コースのときの一軒が
昔のままにあった
うれしかった


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ミーンミーンと今年はじめて聞く蝉の声
野田市役所までの道のりは遠かった

やっとあった
義母の本籍はここ義父の生まれた地にあった
これで義母が栃木県から野田市に養女に出され
ここで結婚の届けを出したことも明らかになった
日本の戸籍制度のおもしろさを発見する旅でもあった

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家に帰って窓から夕焼けを見る
この空のように不思議な一日だった
やっと戸籍謄本を得た
次は住民票だ
旅はまだまだつづく



はじけるしゃぼん星

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